「適正に処理した」「交渉記録は廃棄したから残っていない」「法令違反はない」「関係者への聞き取り調査はしていない」。財務官僚の木で鼻をくくったような国会答弁に不信感は募るばかりだ。にもかかわらず、国有地取引をめぐる疑惑の解明がおざなりにされているのはなぜか。理由は「安倍政権の支持率が下がらないことに尽きる」と森氏は指摘する。
籠池氏の証人喚問後、報道各社の世論調査で政府の説明に納得していない人は7~8割に上ったが、内閣支持率は微減か、ほぼ横ばいで多くが50%台を維持している。
「支持率が下がらないのであれば、余計なことはしないほうがいいと考えるのは当然です。疑惑解明の阻止に世論が加担してしまっているのです」(森氏)
●立証困難な「忖度」
森友学園に絡む疑惑の焦点は、一時名誉校長就任を引き受けていた安倍昭恵夫人を始め、籠池氏に連なる保守人脈が一連の行政の便宜的な計らいにどう影響したのかという点だ。とはいえ、問題の本質が行政内部の「忖度」にある場合、不正を立証するのは困難なのも事実である。
しかし、と森氏は言う。
「忖度や同調圧力が強いのは日本社会の特徴です。組織内の忖度によって自分たちは過去にも大きな過ちを犯してきたという認識をしっかり持たなくてはいけない。つまりは歴史認識です」
日本の統治機構がかつて無謀な戦争に突き進んだ背景にも、御前会議での「忖度」が作用していたことを忘れてはならない。
森氏は強調する。
「日本社会には、こうしたネガティブな特質も内在していることをしっかり身に刻まなければ、忖度による不祥事は今後も続きます」
国民の声に耳を傾けず、政権の顔色をうかがう官僚や政治家ばかりが重用されるような国に未来はない。
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2017年4月10日号