JR西日本がファームスズキ(広島県大崎上島町)と共同開発した「オイスターぼんぼん」。小ぶりながら、味は濃厚だ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
JR西日本がファームスズキ(広島県大崎上島町)と共同開発した「オイスターぼんぼん」。小ぶりながら、味は濃厚だ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
水田整(みずた・せい)/「漁港とも組んで、地方の水産業全体を盛り上げていきたい」。ビジネスプロデュースグループには21人が所属(撮影/編集部・野村昌二)
水田整(みずた・せい)/「漁港とも組んで、地方の水産業全体を盛り上げていきたい」。ビジネスプロデュースグループには21人が所属(撮影/編集部・野村昌二)

 国鉄が解体し、7社のJRが発足して30年。株式上場を機に、脱テツドウにシフトする会社があれば、お先真っ暗な未来にアタマを抱える会社あり。現在のリストラなど働く人たちの労働環境悪化は、国鉄解体に原点があるとの指摘も。「電車の進化」などさまざまな切り口で30年を検証していく。AERA4月10日号では「国鉄とJR」を大特集。JR30年をひもとけば、いまの日本が見えてくる。

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 大阪・天神橋。日本一長い商店街で知られる天神橋筋商店街の一角に、「SABAR(サバー)」というサバ料理専門店がある。塩焼き、南蛮漬け、みそ煮、フライ……と様々なサバメニューがある中、とりわけ人気なのが「お嬢サバ」。姿造りを食べると、肉厚の身がねっとりと舌に絡み、口の中でとろける。サバの概念を覆すうまさだ。

 マグロのトロにも負けない、このサバを養殖しているのが、JR西日本だ。15年6月から、鳥取県と取り組んでいる。一見鉄道とはなんの関係もなさそうな事業だが、創造本部ビジネスプロデュースグループ部長の水田整さんは言う。

「車社会と少子高齢化によって特に地方で鉄道を使う人が減りつつあります。地域を元気にして、地域共生を目指したい」

 同社の16年3月期の旅客運輸収入は前期比7%増の8500億円だったが、伸びたのは新幹線で、在来線の運輸収入は2%減。地域の活性化で鉄道利用者を増やすとともに脱鉄事業の収入を確保する。サバ事業は、事業多角化の象徴だ。

 同グループは、地域活性化を柱とした新規事業を手掛けるため13年に設立。鳥取県が取り組んできた地下海水を使った陸上養殖でのサバに注目し、共同で生産・販売に乗り出した。寄生虫のアニサキスがつかない養殖方法を開発し、生食を実現。悪い虫がつかないよう大事に育てた箱入り娘だから「お嬢サバ」というわけだ。広島県の養殖業者ともタッグを組み、同様の手法でノロウイルスに感染するリスクが低い「オイスターぼんぼん」というカキの共同開発にも乗り出した。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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