日本の学歴社会の頂点に君臨してきた「東大法学部」。政財官に人脈を伸ばし、国を支えてきたえたエリートたちの母体だ。良くも悪くもスタイルを変えてこなかった「象牙の塔」にも、時代の激変の波は押し寄せる。偏差値序列社会は終わるのか。かつて「砂漠」と称された東大法学部はいま、脱皮の時を迎えている。AERA 2017年3月27日号では、東大法学部を大特集。
いい意味でも悪い意味でも、スタイルを変えてこなかった東大法学部。時代の激変は、そんな象牙の塔を「面倒見のよい大学」に変えつつある。
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大教室授業中心で教員と学生、学生間の距離が遠いこと、加えて過酷な試験から「砂漠」とも称されてきた東大法学部。それでもそのスタイルを維持してきたのは法学が体系的で、前提となる知識や教養が非常に多いことに加え、学部生の大半が司法試験や公務員試験を目指すという暗黙の了解のもと、大学が必要以上に学生の面倒を見る必要性がなかったから、でもあった。
だが今、学部生の進路は多様化した。東大法学部もその変化にあわせ、2017年度から大規模なカリキュラム変更をする。最大の変化は、卒業に必要な単位(前期教養課程の単位を除く)をこれまでの90単位から80単位にし、必修科目の数も減らしたこと。一方で外国語科目やリサーチペーパーなど新たな必修科目を一部コースで設けた。コース名も「私法」「公法」「政治」から「法学総合コース」「法律プロフェッション・コース」「政治コース」と今風にして再編。
岩村正彦法学部長(社会保障法)は、変更意図を「法学部を出た後に学生が就く仕事が急速に変化、多様化したことを受けたもの」と語る。卒業必要単位・必修科目を減らしたのは「進路について自分で考え、選択した授業科目の履修がじっくりできるようにするとともに、留学等に出やすくする」ことが狙いだ。
●「砂漠」化は学生次第
外国語科目の導入は、「官民問わず国際化に対応する能力が求められるようになり、適応できる学生を送り出さなければいけないと考えました」と説明する。
東大法学部はこれまでも少しずつ「面倒見のよい大学」に変わろうと制度変更を重ねてきた。06年度法学部進学者から「法学部における教育を、現在より懇切なものとし、そのさらなる質的向上を目指すべく」定員を190人減らして400人に。それと同時に「演習」を必修化し、弁護士を呼んで実務に即した法律解釈を学ぶ「民法基礎演習」という科目も06年度から一部コースで必修化した。
岩村法学部長は、マスプロ授業が多い、という批判については「誤解」と言う。