今年も就活の季節がやってきたが、学生と企業の出会いを演出する新たなビジネスが続々登場してきた。就活サイト経由で「たくさん集めて、たくさん落とす」という日本型一括採用の光景に変化の兆しが現れている。
2月半ばの日曜日の朝。都内のビルの一室に、学生たちが続々と集まってきた。その数約30人。部屋の入り口には大学名と氏名が書かれた「ブース」の見取り図が貼られている。早稲田、慶應、上智、法政、明治、獨協、東京外国語など首都圏の大学に交じって、広島大や九州大などの名前もある。学生は指定された場所に陣取ると、持参したパソコンや、部活のユニホームなどを並べ始めた。
これから始まるのは採用支援ベンチャーのジースタイラスが主催する「逆求人フェスティバル」。同社は「ITエンジニア」「総合職」などのカテゴリーで同様のイベントを全国で実施。この日は「上位校」だ。
ここでブースを設けるのは企業ではなく学生であり、彼らは採用担当者から面談を「申し込まれる」側。こうした就活は「スカウト型」とも呼ばれ、採用コンサルタントの谷出正直さんによると、昨年頃から急速に広がっているという。
経団連が指針で「就活解禁日」とする3月1日以降、リクナビやマイナビなど大手就活サイトが主催する大規模な企業説明会が目白押しだ。それらの「大きな網を仕掛ける」従来型の方式に不満を持つ企業や学生に対し、ベンチャー企業や人材会社が新たなビジネスを仕掛けている。その一つが「スカウト型」だ。
この日、逆求人フェスティバルに集まった企業は上場企業からベンチャーまで15社。開始の合図と共に、採用担当者らが学生のもとへ向かう。事前に登録されたプロフィルで、ある程度目星をつけているようだ。
「こんにちは。株式会社○○で採用を担当しております○○と申します」
●専用アプリで“指名”
担当者は名刺を渡しながら学生たちと軽く雑談し、30分ほどで控室に移動。「お見合い」の感触をもとに、個別に面談したい学生を専用アプリで指名する。ほどなく企業、学生双方のアプリに、面談のスケジュールが表示された。各30分8枠のすべてに予約が殺到する学生もいれば、最後の1、2枠しか埋まっていない学生もいる。なかなかシビアだ。