トランプ米大統領の登場で先が読めなくなってきた国際情勢。だからこそ、見えにくい事実をあぶり出す新しい地図に注目したい。AERA 2月20日号では「地図であぶり出す未来」を大特集。
「真実の発信」にこだわるドイツ人地理学者がいる。ベンジャミン・ヘニッグ博士(38)。アイスランド大学で准教授として地理学を教える研究者だ。ヘニッグ氏はインターネット上で、作成したカルトグラム(統計地図)を公開している。地図が明らかにした米大統領選の矛盾とは……?
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ヘニッグ氏のホームページで最もアクセス件数を集めているのが、2016年11月の米国大統領選の投票結果を分析したカルトグラムだ。
得票総数が多かったクリントン候補が、少なかったトランプ候補に敗れるという選挙制度の矛盾を、極めて明確に視覚化したカルトグラムとして評価が高い。
手法はブレグジットと同じ。各州の人口比率で面積を変化させた全米地図に、クリントン票は青、トランプ票は赤で色分けした一般投票結果を重ねた。面積を細工せずに投票結果を示した通常の地図では、全米がトランプ支持の赤で染まっているのに、人口比率を落とし込んでみると一転、クリントン支持の青が目立つようになる。
●分断を不気味に表現
同じ投票結果を示しているのに、二つの地図が視覚的に与える印象は正反対だ。クリントン氏の得票総数がトランプ氏より約290万票も多かった確定結果を踏まえると、カルトグラムのほうが真実に近い投票結果を描写していることが分かる。
通常の地図では隠されてしまった真実を、人口比率を掛け合わせることで、見事にあぶり出した。ヘニッグ氏が解説する。
「有権者の投票行動の実態が、ここまで鮮明に浮かび上がったことに、自分でも驚いた。トランプ氏は一般投票で過半数を得ていないという真実を、分かりやすく、かつインパクトをもって視覚的に示す有力なデータとなった」