アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は大宅壮一文庫の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■大宅壮一文庫 事業課 主事 鴨志田浩(49)
およそ1万タイトル、77万冊の雑誌を所蔵する大宅壮一文庫(東京都世田谷区)。評論家・大宅壮一のコレクションを引き継いでつくられた日本で初めての雑誌図書館だ。所蔵する雑誌で一番古いものは、1875(明治8)年の「会館雑誌」。新刊雑誌の蔵書は、年間約1万冊のペースで増えている。
大宅が1956年につくった書庫が、今でもバックヤードで使われる。利用者が閲覧を希望する雑誌を用意するため、人ひとり通るのがやっとの通路をスタッフが慌ただしく走り回る。書庫から出されるのは1日約1700冊。取り出す雑誌の右側の雑誌を少し出すのは、返却がしやすいように。鴨志田浩は言う。
「この間、初めて取り出す雑誌がありました。これだけ多いと、きっと一度も取り出すことなく終わる雑誌もあるんでしょうね」
ふと思いついて、NHKの「とと姉ちゃん」で見た商品テストが載っている「暮しの手帖」を見たいとお願いすると、迷いなく一つの書棚まで歩き、スッと1冊抜き取った。
「ああ、これはアイロンの商品テストが載っている号ですね」
どの雑誌が、どの書庫の、どの棚にあるかは、頭の中に入っている。勤続31年の大ベテラン。日本ジャーナリスト専門学校に通っていた18歳のとき、大宅文庫でバイトを始め、卒業後に職員になった。
利用者のために雑誌を探して用意したり、コピーを取ったり、書庫への返却作業をしたりといった日常業務の合間に、新しく到着した雑誌が傷まないように表紙にブックコートをかけたりする。最近は、雑誌記事索引のデータベースの維持運営にも関わっている。
「スタッフは30人程度で手が足りないので、全員で助け合いながら作業しています」
利用者数が減少傾向にある大宅文庫は一時、財政難のニュースも流れた。もっと広く存在を知ってもらおうと、バックヤードツアーを始めるなど、努力も怠らない。
「利用している方の役に立つことが、何よりうれしい」
(文中敬称略)
(編集部・大川恵実)
※AERA 2016年10月31日号