日銀はマイナス金利という新手を繰り出してデフレ脱却を目指したがめどは立たない/2016年1月 (c)朝日新聞
日銀はマイナス金利という新手を繰り出してデフレ脱却を目指したがめどは立たない/2016年1月 (c)朝日新聞
井上智洋(いのうえ・ともひろ)/駒澤大学経済学部講師/1975年生まれ。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』など (c)朝日新聞社
井上智洋(いのうえ・ともひろ)/駒澤大学経済学部講師/1975年生まれ。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』『ヘリコプターマネー』など (c)朝日新聞社

 2017年が幕を開けた。16年は、トランプ氏の大統領選勝利に代表されるように、世界中で既成概念や秩序が「反転」した年だった。アベノミクスの今後はどうなるのか、駒沢大学経済学部講師の井上智洋さんに話を聞いた。

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 2016年は、日本銀行によるマイナス金利政策の導入や、長期金利を0%程度に誘導する目標の設定などの金融政策が相次ぎましたが、2%の物価上昇率という目標を達成する時期も先送りされました。

 12年12月に発足した第2次安倍政権の当初は、量的緩和政策だけでなく、「アベノミクス」というネーミングも含めて景気回復に対する市場の期待が高まり、実際に景気回復につながりました。しかし、その期待も14年4月の消費増税によってしぼみ、インフレ予想も失速しました。

 では、いまだに達成できていないデフレ脱却に向けて、17年にすべきことは何なのでしょうか。政府は景気回復だけでなく財政再建も目指すとしていますが、財政再建という目標を捨てないと、デフレからの完全脱却は難しいでしょう。金融緩和を続けるだけでは、デフレ脱却の効果はありません。

 ゼロ金利またはマイナス金利の状態では、財政政策によって市場に流れるカネの量をコントロールできるようになると、私は考えています。今年、政府がやるべきことは、ゼロ金利またはマイナス金利の金融政策を続けたまま、財政再建という目標を捨てることです。市場に流れるカネの量を増やすために、積極的な財政政策を行い、国債を発行するのです。

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