ただ、注目したいのは、レーガン政権も最初は非常に強硬な対中政策をとったし、私が国家安全保障会議(NSC)にいたときのジョージ・W・ブッシュ政権もある意味、同じだったと言えますが、最終的には両政権下でも米中関係は、極めて良好で生産的なものとなったということです。
私は、国務長官となる米石油大手エクソンモービル会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・ティラーソン氏、あるいは国防長官となるジェームズ・マティス元中央軍司令官が、中国と事を構えることを最優先事項に据えるとは思いません。1月20日の大統領就任式で正式に発足する新政権内では、ある程度の内部摩擦や議論は起きるでしょうが、それもレーガン政権のときのように、しばらくの間だけだと考えます。
●米ロ関係改善も疑問
一方、トランプ氏は個人的に、より親しみをもってロシアを見ているのは間違いありません。それでも連邦議会や国防総省、国務省、そして共和党の有権者たちは違います。ウクライナ侵攻やシリア国民への暴力、そして何よりも米大統領選挙でのハッキング問題を背景に、ロシアに対する警戒心が極めて高いからです。プーチン大統領が対米姿勢を改めない限り、米ロ関係が改善されることはないと私は疑っています。むしろオバマ政権時代と同じように次第に悪化していくことになります。
こうした状況の中で、安倍政権はどうすべきか。最初にすべきことは、トランプ氏との個人的な信頼関係を築くことです。この新大統領は、国家間の情勢や出来事よりも、その人柄をもって判断する傾向にあります。その意味では、いち早くトランプ氏と会談をした安倍首相はすでに行動を起こしたと言えます。
次に重要なのは、日米同盟に対する日本側の貢献として、共通の目的意識を表明するという観点から、金銭面以外で何ができるのかを示すことです。金銭的な貢献と同等の重要性を、相互運用性や統合性といった「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)に沿う全事項が持っています。