「NMNはビタミンのようなものなので、薬とは異なり、そのまま体内に入れても安全なはず」
と考えた伊藤さん。共同研究を進める米ワシントン大学の研究チームとともに、NMNをサプリメントのようにして飲んだときの安全性などを見極める臨床研究を始めた。
「NMNは老化を予防し寿命を延ばす。90歳や100歳と高齢になっても健康でいることができると考えています」(伊藤さん)
数年後にはサプリメントとして使えるようになるかもしれない。
●タオルたたむロボット
ロボットが、日常生活を変える。そんな日も遠くはない。
ロボットを操作してタオルを折りたたむ「練習」を何度もする。そうすると、ロボットが折り方を「学習」して他のタオルも折りたたむことができるようになった──。
早稲田大学教授の尾形哲也さん(47)らは、自ら学習して行動するロボットの「頭脳」を開発している。
実は、人間が簡単にできることほど、ロボットにとっては難しいという。通常のロボットだと、あらかじめ決まった同じ色や形、素材のタオルしか折りたためない。
それを克服しようとしているのが、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる人工知能だ。尾形さんらが開発したロボットは視界や音の情報、入力した言葉、ロボット自身の動きの情報などをもとに、ディープラーニングによって、環境を認識して自らの動きを作り上げることができる。ロボットは、タオルの色や形、素材が変わっても折りたためるというわけだ。さらに、
「タオルの代わりに本を開いて置いてみたところ、これを閉じました」
と尾形さん。ロボットがまるで、親をまねる子どものような動きをするのだ。
●アルゴで発情を推定
一方、等身大の人型ロボットの開発も進む。
「うちの実家は田舎で、庭の草むしりが大変。私が東京にいても、遠隔操作でロボットが草むしりをしてくれたらいいですよね」
と東京大学教授の稲葉雅幸さん(58)がほほ笑む。
「もともと家の中で家事を手伝ってくれる人型ロボットを開発してきた」という稲葉さんら情報システム工学研究室(JSK)が開発した身長188センチの人型ロボット「JAXON」は、家事だけではなく屋外での災害救助もできる。故マイケル・ジャクソンのような足さばきができるようにと名前をつけた。災害現場で車に乗ったりドアを開けたり消火器を上手に扱って火を消したりできるよう研究が進められている。