月曜10時の「SMAP×SMAP」は96年4月、「ロングバケーション」と同じ日にスタートしており、「月9」全盛期の始まりはSMAPがテレビ界で頂点に立った時と同じだ。SMAPのメンバーは木村以外も「月9」で主演し、SMAPの歴史と「月9」の歴史、さらに「平成」史とも重なる。譲位により平成も終わるかもしれず、SMAPも解散する。ということは、「月9」の終わりも近いのか。

●局によって違う演技を

 木村拓哉はTBSでも「ビューティフルライフ」など高視聴率を取ったドラマがあるが、この局では、力の入ったよそゆきの演技をし、「月9」に限らずフジのドラマでは、洗練された普段着っぽい(劇中の衣装のことではない)演技をする。

 TBSは開局当初からドラマに力を入れていたこともあり、60年代から「ドラマのTBS」と称されていた。その伝統は、常に新しい時代に対応することで続いてきた。大家族を舞台にしたホームドラマを次々と作りながら、いち早く、「岸辺のアルバム」や「金曜日の妻たちへ」で核家族を描き、結婚しない男女が増えるとその恋愛遊戯を「男女7人夏物語」で結実させた。以後、低迷期もあったが、この伝統は生きており、「半沢直樹」のような大ヒット作を生む力を持っている。

 テレビ朝日は、今季も「ドクターX」と「相棒」「科捜研の女」などが好調だが、どこか野暮ったく、洗練さに乏しい。タイトルからしてベタだ。だからこそ、万人に受ける。連続ドラマは1回見逃すと話が分からなくなるが、1話完結であれば、その心配はなく、物忘れをする世代も安心だ。結局、そういう世代がテレビの視聴者なのだ。

「月9」凋落は「洗練された世界」に人々、とくに若い世代が、飽きたというか疲れたからなのかもしれない。月曜の夜は、1週間の仕事が始まったばかりで、まだ虚構と戯れる余裕がある時間帯だ。かつての「月9」はそんな気分に合っていた。いまはもう、月曜夜から、そんな余裕がないのだろうか。(編集者/作家・中川右介)

AERA 2016年11月28日号