お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が4冊目の絵本『えんとつ町のプペル』を刊行。制作費はクラウドファンディングで集め、制作は完全分業制。異例づくしの裏にある思いとは?
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絵本作家としても活躍するお笑いコンビ・キングコングの西野亮廣(36)の新作は、これまでのモノクロ細密画の作風から一変、圧倒的な完成度のカラー画が並ぶ。絵本としては異例の総勢35人のクリエイターによる完全分業制で制作された。
「見たこともない途方もないものを作るなら一人では無理なので。でも、とてつもなく大変でした」
描き始める前にスタッフを集め、石は、屋根瓦は、と絵のタッチを一つずつ決める。町の構造も、川はここを流れていて、こっちに富裕層が住んでいて……と全体の地図を作った。
「そういう準備だけで7~8カ月かかっています」
●版元にプレッシャーを
破格の制作費は西野自身がクラウドファンディングで1千万円以上を集め、さらにアマゾンでは発売の3カ月前からしか予約できないと知るや、自ら販売サイトも立ち上げ、予約販売をした。販売サイトで購入した場合はすべて彼のサイン入り。クラウドファンディングのリターンにもサイン本が含まれるため、彼がするサインの総数は8300冊分になった。
「出版社にプレッシャーをかけてやろうと思って。本が売れないって言ってるけど、ちゃんと時代に合わせた売り方をしたら売れると思います」
絵本は5千部や1万部でヒットと言われる世界。
「まず一人で1万部売ろうと。制作に4年半かかっているので、売る時間もそれだけあるわけです。本を買いたいタイミングなんて人それぞれ。届けたい人がいて、届けてほしい人がいて、そこを円滑にするためにアマゾンみたいなサービスはあるはずなのに、ルール的に無理だった」
西野には常識が通用しない。空気も読まない。それは彼のSNSがたびたび炎上することでも知られている。今回は「人が行動する理由は確認作業でしかない」と絵本のオチまでブログですべて公開した。ブログには出版社に許可は取っていないと書かれている。彼の1作目からの編集者、幻冬舎の袖山満一子さんに確認すると、そもそも「打診もなかった」とのこと。