アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は日本盲導犬協会の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■日本盲導犬協会 神奈川訓練センター 訓練部 マネージャー 田中真司(35)
5年前、この仕事を続けるかどうか考えたことがある。30歳の節目だった。そのとき頭をよぎったのは、これまで出会った犬と視覚障がい者たちのことだった。
世界を飛び回って働いていた人は、人生最後の相棒と思っていた盲導犬に、毎日ピカピカにブラッシングをし、愛情を注いだ。光を失うとともに、一度は生きる目的を失った人からは、「盲導犬と一緒に鍼灸学校に通い始めた」と喜びの声が届いた。誰かの人生が大きく変わる。その一助となれた誇りが、田中真司=写真手前=の心にじわりと湧いた。
中央大学法学部を卒業後、法科大学院を受験したもののかなわなかった。進路を考えあぐねた末、盲導犬訓練士学校に1期生として入学した。2004年のことだ。