「その点に配慮して、仲井戸は顧客企業一社一社に、手紙を送って理解を促しました。社内では理解など得られないという意見がほとんどでしたが、結果からいうと顧客離れは起きなかった。むしろ、残業が減って、有給取得率が伸びたのに、右肩上がりの成長が続いています」(同)
実は、仲井戸氏が目指した社員の健康も目に見えて改善していったという。
「“スマチャレ”を開始して以降、メンタルをすり減らして休職する社員が着実に減ったんです」
同じくITの分野では、グーグルの取り組みも興味深い。最小限の投資で最大限のリターンを得ることよしとしているため、とにかく無駄がないのだ。
「ミーティングは基本的に30分刻み。事前に“時間配分付きアジェンダ”といって、議論する議題(アジェンダ)ごとに費やす予定の時間を明示したものを、ミーティング参加者と共有できるようにしています」(グーグル広報部部長・河野あや子)
その情報共有に利用するのはグーグルカレンダー。すべての社員のスケジュールがカレンダー上で確認できるため、オーナー(会議の主催者)は勝手にミーティングに参加すべき人のスケジュールを確認して、画面上で予定を押さえて行くことが可能だ。だから、時には知らぬ間に1日に何件ものミーティングの予定が入れられていることも。
実際のミーティングも、徹底的に無駄を排除。
「グーグルドライブのドキュメントを使って、話し合いながら議事録をつくってしまいます。一人がテキストを書き込めば、ミーティング参加者が表示しているドキュメントもリアルタイムで更新されるため、個々にメモを取る必要もない。途中参加者もすぐにどこまで話し合いが進んでいるのかわかるので、効率的です」(同)
30分のタイムリミットまでには必ず、議題について結論を出すという。
「最後には『じゃあ、AI』とと呼びかけて、次回に向けた宿題事項(AI=アクション・アイテム)の確認を取ります。参加者の誰が、いつまでに、何をしておくかを確認して、次回のミーティングにはその宿題を持ち寄って議論を深めていくのです」
これがグーグル流ミーティング。ダラダラ会議が恒常化している企業はぜひ、お試しを。(ジャーナリスト・田茂井治)
※AERA 2016年11月21日号