いかに残業を減らすか? 多くの企業が頭を悩ましていることだろう。「残業をするな」と号令をかけたところで、仕事を自宅に持ち帰る従業員が増えるだけ。「19時完全消灯」を徹底したところで、早朝出勤が増えるだけなのだ。労働時間は変わらず、残業代だけがカットされれば、社内の不満は溜まるだけ。継続して残業を減らすには、仕事の効率化を促す仕組みと環境づくりが不可欠なのだ。その成功例を紹介していこう。
「『夜中まで働かされるから、あの部署にはいきたくない』。以前はそんなことを言われていた部署でした(笑)」
こう話すのは日本航空(JAL)の物品、役務の調達を一元的に担う調達本部の企画グループ長・埋金洋介氏だ。「すべてのコストは調達本部を通る」といわれるように、扱う物品はコピー用紙から航空機まで様々。膨大な業務に加えて、海外サプライヤーとの取引もあるため、一昔前までは夜12時近くまで働き続ける社員が多くいたという。そんな社内の様子が一変したのは2015年2月のことだった。
「10年の経営破綻以降、社員が減り続けた影響で、激務の改善を促す声が高まりました。ワークスタイル変革に着手する機運が高まるなかで、調達本部がモデルケースとして手を挙げたのです」(同)
その“変革”の骨子となったのは、「ペーパーレス化」「ノートPC化」「スマホ化」「座席のフリーアドレス制」「新勤務管理」の5つ。まず、段ボール箱291箱分の紙文書をすべて電子化したうえで、デスクトップPCをノートPCに交換。さらに、全員にスマホを貸与した。こうして、社員をデスクに縛る書類・PC・電話の3要素を排除。場所の制約なく働ける環境を整えることで、仕事の効率化を図った。
「意外に時間を取られるのが、電話の取次ぎ。代表電話が鳴るたびに集中が途切れる。スマホを貸与して、取引先とのやり取りを個人のケータイに一本化することで、電話の音が鳴らないオフィスになりました」(同)