「まず社員は4人掛けのテーブルであるコミュニケーション席、パーテーションのあるソロ席、一人で集中できる集中席のいずれかを選択します。そのうえで、何時間利用するか選択する。1時間刻みで最大でも5時間なので、終日オフィスにいる人でも1回は席替えをしなくてはなりません。席を強制的に移動させることによって、異なる部署間の人間が自然と交流するようにしたのです」(同)

 ユニークな仕組みだが、当初は反発の声もあがったという。「こんな仕組みでは部下がどこにいるかわかりにくく、管理しずらい」

 もっともな意見だが、松本会長の答えはシンプルだった。

「『世の中にはフリーアドレス制じゃない会社はごまんとあるんだから、嫌なら辞めて転職すれば?』と突っぱねたんです。それ以来、誰も文句を言わなくなったようです(笑)」(同)

 松本会長はこのオフィスの改革と並行して、「カルビー流成果主義(Commitment&Accountability)の導入を進めた人物だ。組織と個人の利益目標を設定し、各人の目標と成果をイントラネット上で“見える化”。厳格な査定システムを取り入れることで、労働時間ではなく“成果に対する報酬”の文化を根付かせたのだ。

 この改革の結果、カルビーは2016年までの7年間で利益率を10倍以上に伸ばすことに成功。「松本は、仕事が終われば午後2時に帰っても構わないというスタンス。おのずと残業する人も減った」(同)という。

 カルビーはトップの超強力なリーダーシップのもと、ワークライフ改革を実現した好例だが、似たような事例が、365日・24時間の顧客対応が常態化しているIT業界にある。2011年にCSKと住商情報システムが合併して誕生したSCSKの取り組みだ。

「システム開発の業界には激務により、身体もメンタルもすり減らしてしまう技術者が少なくありませんでした。社員の健康が第一と考えて、この業界としては“非常識”とも言える残業削減運動を強力に推し進めたのが、現相談役の仲井戸(信英)だったのです」(SCSK人事企画部長・小林良成氏)

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