投開票日の11月8日間際に、不祥事が続々と浮上し、「窮地」に追い込まれた民主党候補のヒラリー・クリントン。最後の演説は弱々しくさえあった。
大統領選投開票日まで残り6日と迫った11月2日。激戦州の一つ、南西部のアリゾナ州フェニックスに、民主党大統領候補のヒラリー・クリントン(69)が「最後のお願い」に訪れた。
演説の締めくくりはこうだ。
「将来、子どもに、あるいは孫に、2016年11月8日に何をしていたのかと聞かれた時、誰もがこう答えることができることを願っています。『私はあの時、より良き、強き、正しいアメリカのために投票した』と」
有権者に米国の将来を託すメッセージだ。
●メール問題再燃で急落
一時は楽勝とみられたヒラリー陣営に、「大逆風」が吹き始めたのは、投票日のわずか11日前。まず、米連邦捜査局(FBI)が10月28日、国務長官時代の私設メールサーバー問題について、一度は終わったと宣言した捜査の再開を表明した=左の年表。さらに、民主党全国委員会の暫定委員長で、CNNアナリストのドナ・ブラジルが、予備選挙中の市民対話集会で、市民から出る質問を事前にヒラリー陣営に漏らしたとされるメールをウィキリークスが暴露、彼女はCNNを辞任した。
同時に、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、クリントン一家の慈善団体「クリントン財団」が資金を不正に使って一家に利益をもたらした疑いが生じた際、捜査を巡ってヒラリーを支持する司法省高官とFBIが対立していたと報道した。
メール問題でFBI長官のジェイムズ・コミーは、投開票日直前の捜査再開表明は、「特別な透明性」が必要だったと説明。捜査当局が動いたことで、ヒラリーの支持率は急落した。
弁護士でテレビのコメンテーターであるダン・エイブラムス運営のサイト「ロー・ニューズ」によれば、仮にヒラリーが当選後に訴追されても、有罪となって拘束されない限り大統領に就任することはできる。ただ、実際に訴追に至れば、就任を辞退する可能性もあるだろう。
ただ、在職中に訴追を受けた例はある。夫のビル・クリントンだ。ホワイトハウスのインターンだったモニカ・ルインスキー(当時22)と性的関係を持ったことが発覚、下院がビルを「偽証罪」などの疑いで弾劾訴追したが、ヒラリーや民主党のサポートで有罪評決は免れている。
フェニックスの集会に来ていた元弁護士のマリー・ジェニー・フィンチャー(65)は、25年に及ぶヒラリーの支持者。彼女をこう弁護する。