豊洲市場の「盛り土」問題で東京都中央卸売市場の市場長が更迭された。一連の問題の背景には組織の閉鎖性があるようだ。
築地市場の移転先である豊洲市場の主要建物の下に盛り土がされていなかった問題で、東京都の小池百合子知事は、10月15日付で中央卸売市場の岸本良一市場長を更迭した。異動先は「市場長より格下」(小池都知事)の総務局理事という、降格人事だ。
批判を浴びた末に更迭された岸本氏。説明内容が事実と異なり謝罪するなど、世間のイメージは悪いが、
「率直で模範的な幹部。今回のことがなければ当然もっと上にいける人だった」
「岸本さんは気の毒」
意外なことに都庁内での評判は悪くない。地下空間をつくるのが決まったのは、岸本氏の着任前。しかも「移転延期は都職員にとってちゃぶ台返しの思い」(都政関係者)とあって同情を集めているのだ。
●市場長は出世コース
しかし元東京都副知事で、明治大学公共政策大学院特任教授の青山やすしさんは、
「民間企業であれば、問題がわかった時にトップが責任を取るのが当たり前。その当たり前の処分が都でも行われただけ」
と同情論を一蹴する。
そもそも市場長とはどんなポストなのか。都の中央卸売市場は知事部局の組織の一つで、築地市場や大田市場といった都内11の中央卸売市場の管理、運営をしている。そのトップである市場長は局長級。岸本氏の2代前の市場長だった中西充氏は現在副知事を務めるなど、出世コースの一つでもある。岸本氏は1984年に都に入庁。89年に管理職選考に合格、96年に課長に昇進。2012年には局長級のスポーツ振興局(当時)次長に就任と、順調にキャリアを重ねた。