「東京で銀座店をオープンさせた時は、数日間で五十数社の取材を受けました。朝のニュースの生中継のために5時から店にスタンバイし、新聞の夕刊に間に合うように、オープニングセレモニーを一日に2回。学長にもあいさつを2回お願いしました」

 課長になって「パソコンとか英語とか、苦手な実務部分はできる人にまかせられるようになった」ぶん、社内や部内での調整役という仕事が増えた。多忙であまり席にいない部長のスケジュールや仕事内容にさりげなく目をくばり、部員に次の動きを指示したり資料をそろえたり。

「部長のOKが出るか微妙なものがあれば、『早めに部長に見てもらったほうがいいよ』といったアドバイスもします」

●近大に来てよかった

 OBの音楽プロデューサー、つんく♂さんがプロデュースするなど「日本一派手」とされる入学式の運営も、加藤さんの仕事。派手なパフォーマンスと入学式というセレモニーを共存させるよう、学内の調整に走った。今年は、これまでは式の途中にあった学長式辞を冒頭に持ってきた。会場の盛り上がりを途切れさせたくなかった。

「最初は反発されましたが、何回も趣旨を説明したら最終的に承認されました。人気が上がったとはいえ、第2志望以下で本学に来る学生は多い。そういった学生に『近大に来てよかった』と思ってもらいたいんです」

 普段から明るく、「言いたいことを全部言う」からストレスはたまらないという加藤さん。だが、出張では部員一人一人の家族構成や趣味にあった土産を選ぶ気遣いを欠かさない。

 地道な日常業務が派手な広報戦略を支えている。(編集部・福井洋平)

AERA 2016年10月10日号

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