アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はイケア・ジャパンの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■イケア・ジャパン IKEA新三郷 In-store Logistics Goods Flow Manager 松下美穂(24)
スウェーデン発祥の家具販売店、イケア。4万平方メートルの店内には1万点近い商品が並べられている。その在庫を管理し、14人の部下を統括するのが松下美穂だ。入社5年目。自らフォークリフトを乗りこなし、週末にはサーフィンを楽しむ姿はパワフルでエネルギッシュそのもの。
短大時代、カナダやイギリスなどに留学し、よく海外をひとり旅した。将来像が思い描けず行き詰まっていた卒業間近、旅先で見かけることが多かったイケアで働いてみることにした。2012年2月のことだ。
入社後、社内公募を利用してキャリアアップ。その中で、1年間海外で働く「バックパッカー制度」の存在を知り、応募。日本から行けるのは半年に1人だけだが、狭き門をくぐり抜けた。
赴任したのは、米国フィラデルフィアの物流部門。日々繰り返される棚卸しで、在庫管理の精度を向上させるプロジェクトを担当した。経験や語学力に不安が残る中、人種も年齢も様々な20人を引っ張った。
「信頼を得ないまま物事を進めてしまい、何度も衝突しました。結果を出さないといけないというプレッシャーがあったんです」
それでも話し合いを重ね、時には譲歩。「飲みにケーション」も実践すると、1カ月ほどで徐々に結果が伴うようになった。結局、予想を上回る3カ月で目標を達成。残りの期間は別のプロジェクトを自ら立ち上げ、さらに在庫管理の精度を高める新しい基礎を築くまでになった。
「最初は、“sushi princess”と馬鹿にされていましたが、最後はそれが愛着のあるニックネームに変わりました」
人と仲良くなるスピードがほかの人より速いと笑顔で話す。その言葉通り、カメラマンが注文するポーズにもノリノリで応え、撮影のための特別なセッティングの力も借りて、無機質な倉庫をビーチの雰囲気に変えた。
そのバイタリティーで、海外店のマネジャーを任されるのが次の目標だ。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・小野ヒデコ)
※AERA 2016年6月13日号