(1)青信号と同時の出発
例えばJR中央線の場合、行き止まりで2線しかない東京駅での折り返しをスムーズにすれば増発できる。現状、車掌は青信号となってから発車ベルを鳴らしてドアを閉めている。
「現行、2番線からの出発は青信号からだいたい25秒後。青信号の25秒前に発車ベルを鳴らせば、青信号と同時に出発でき、運転間隔を縮められる。誤って赤信号で出発してもATS(自動列車停止装置)で列車は止まるので、安全性は下がらない」
他にも同じような路線があると阿部さんは言う。
(2)ドア閉めと同時の出発
すべてのドアがきちんと閉まっているか確認する時間も短くできると阿部さんはみる。4月に東京メトロ半蔵門線でベビーカーを挟んだまま列車が走る事故があったが、「車掌や駅員の目視頼みではなく、ドア挟みの検知感度を上げて確認の時間を短くすれば、運転間隔を10秒くらい縮められる」という。
残りの3方策は(3)全列車が3駅ごとに通過する「選択(千鳥)停車ダイヤ」、(4)車両の加減速度向上、(5)信号の機能向上、だ。
「(5)については、列車の位置を今より正確に検知し、後続列車の制限速度を細かく指示できるシステムを開発したい」
この5方策をすべて実行した場合、「技術者の腕次第だが、安全を確保したうえで中央線など終端折り返しのある路線で1分20秒に1本(1時間に45本)、東京メトロ東西線など都心を貫通する路線で1分に1本(1時間に60本)を運行できる」と阿部さんは言う。現行の各路線は1時間に20~30本なので、輸送力は1.5~3倍になる計算だ。
●実現性は薄いが
実際にこの方策は可能なのか。まず(1)について、JR東日本は「運転士が赤信号で出発させるヒューマンエラーの新たな要因となる。列車衝突の恐れがあり、安全装置が動作すると対処に時間を要し大きな輸送障害になる」と回答。別の私鉄は「いつ青信号になるかわからないのにドアを閉めることは想定しづらい」「列車間隔がちぢまるとノロノロ運転になりやすい」ともいう。阿部さんは「赤信号では列車が起動しない仕組みに改めれば、事故も混乱も生じない。また、終端駅ではいつ青信号になるかのパターンはある程度読めるはず」と反論する。
(3)について「実現性が薄い」と指摘するのは、曽根悟(さとる)工学院大学特任教授だ。