作戦中に原発事故で発生した放射性プルーム(雲)の下で強い放射線を浴び、汚染された海水(脱塩水)を飲食やシャワーに使って内部被曝した可能性があるという。しかし、米国防総省は2014年に公表した報告書で、被曝は「極めて低線量」として健康被害との因果関係を否定している。
「丈夫だった兵士が活動できなくなって、除隊せざるを得ない。除隊してしまうと、軍隊時代の医療費の補助がなくなるんだってね。日本みたいに国民皆保険じゃないから、医療費が高い。だからなかなか病院にも行けない。これは何とかしなくてはいけないと思ったね。日本に対して何かしてほしいことがあるかって聞いても言わないんだよね。仕方がないとしか。病気になっても日本が好きだと言ってくれるから、ぐっと来ちゃったよ」
小泉氏は兵士らとの面会後の記者会見で、感極まって涙をこぼし、「原発推進論者も反対論者も、何ができるか共同で考えることだ」と訴えた。
帰国後、外務省の幹部とも会ったが、「日本政府としては、お気の毒だけれど何もできません、と言われた」。
そこで「かわいそうというだけじゃすまない。政府ができないというのなら、自分たちで何かやるべきじゃないかと思ったから」、吉原氏や細川護熙元首相らとともに基金を設立、寄付を募り始めた。
●原発ゼロでいける
応援団も現れた。建築家の安藤忠雄氏だ。テレビ報道で基金のことを知り、小泉氏のもとに連絡があった。
「1千万円支援するよと言ってくれた。1万円の会費を取って大阪で講演会をするから、そこに小泉さんが来てくれたら、1千人集めるというんだ」
基金設立の会見をしたのが7月5日で、講演をしたのが8月18日。
「お盆の直後だったけど、そこなら会場がとれるというから。100人、200人しか集まらなかったらどうしようかと思ったけど」
実際には1300人が押し寄せ、1300万円も集まった。
今、兵士らは米国で東京電力などを相手に裁判を起こしている。
「彼らは、どんな被害があっても米国政府を訴えないという誓約書を書いている。だから、東電とかを訴えているんだね」
小泉氏は今、原発ゼロ社会の実現に向けて活動している。
「引退後の中心は、原発ゼロを国民運動として盛り上げていくこと。年寄りだって大志を抱いていいんだ。基金も、原発への賛否を超えてやってくださいと言っているけど、原発賛成者というのは、やっぱり協力するのは難しいよね」
原発ゼロを訴える原点については、こう語る。