●恐怖でなすすべなく
一方で、植松容疑者は今年2月14、15日、犯行予告ともとれる手紙を衆院議長公邸に持参した。「私は障害者総勢470名を抹殺することができます」と宣言している。「障害者を殺すことは不幸を最大まで抑えることができます」と異常な主張を披露し、「作戦内容」として、まさに今回実行に移したことと酷似した内容の犯行計画を書き記していた。
警視庁が神奈川県警にこの情報を提供し、植松容疑者は2月19日に退職。相模原市が措置入院させ、尿と血液の検査から大麻使用の反応が出たものの、3月2日に退院させていた。市は県警には大麻反応の情報を伝えていなかった。
犯行時の様子について捜査幹部はこう語る。
「犯行に用いた刃物は計5本。最初は胸や首を刺していたが、刃こぼれしたり先が折れたりして、現場に2本放置したようだ。夜勤の職員は8人いて、うち5人が見つかって縛られた。ある職員はロビーで容疑者を見かけ、知らずに『植松さん』と声をかけたところ、よく見ると包丁の先からポタポタと血が垂れていて『ちょっと来てくれる』と容疑者に凄まれ、恐怖のあまりなすすべもなく縛られたそうです」
植松容疑者は取り調べには応じているが、薬物検査に関して変わった反応をしたという。検査では、薬物の種類ごとに意向を聞いて尿を任意提出するのだが、覚醒剤と危険ドラッグに関しては了承したのに、大麻については拒否したため、強制採尿することになった。
「自宅の家宅捜索でも大麻らしき植物を押収したし、本人に使用している自覚があったのでしょう。派手な入れ墨をたくさん入れていて、暴力団や周辺者と付き合いはあるが『自分は違います』と言っている。ムエタイ(タイ式キックボクシング)の経験もあるようです。園の職員当時、勤務態度は怠惰でサボりぐせがあり、入所者の手にいたずら書きをするなどして注意されたこともあったが、暴力を振るうまではなかったようです」(前出の捜査幹部)