アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はバンダイの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■バンダイ ボーイズトイ事業部 戦隊チーム マネージャー 中野 拓 (38)
特撮ドラマ「スーパー戦隊シリーズ」は2月にスタートした「動物戦隊ジュウオウジャー」で40作を数える。時代を反映してか5人のうちブルーとホワイトの2人が女性。しかし、リーダーはやっぱりレッドだ!
戦隊ヒーロー&ヒロインが使う武器やロボットなどを企画するのが中野拓。7人の部下とともに、東映をはじめ関係各社と構想を練り上げ、おもちゃとして商品化する。
準備は、番組が放送される半年以上前から始まる。「カッコいい」「簡単に遊べて楽しい」というだけではダメ。安全性にも厳しく目を光らせる。一定の基準の高さから落としても壊れないか。壊れてもケガなどの危険がないか。小さな子どもが使うものだけに、世に出るまでに厳しいテストと調整を繰り返すのだ。商品によっては試作を7、8回繰り返すこともある。
2001年、早稲田大学社会科学部を卒業しバンダイに入社。以来、男児用玩具企画開発一筋だ。09年から4年間は、バンダイアメリカに出向した。スーパー戦隊は、アメリカでは「パワーレンジャー」という名で20年以上放送。おもちゃも、日本と同じように販売されている。
「モットーは「楽しく仕事をする」
「『それ、おもしろいね』『カッコいいね』と積極的に言葉で表現して、『僕らは楽しいものを作っている』ということを忘れないようにしています。納期に追われていると忘れてしまうこともまれにあるんですが……」
同じ会社に勤める妻との間に、6歳と4歳の子どもがいる。保育園の送り迎えは交代制、週末は子どもたちとおもちゃ屋へ。
「実は、子どもが生まれる前は、“おもちゃはなくても生きていける”と思っていました。でも、子どもたちを見ているとおもちゃは必要だと思うようになった。日本だけでなくアメリカ、韓国、台湾……世界中に待っている子どもたちがいる」
ここにも、子どもたちが憧れるべきヒーローが、いた。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2016年3月28日号