アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回は外務省の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■外務省 欧州局 政策課長 小林麻紀(49)
東京・霞が関の外務省のホールを埋め尽くす、欧州、ロシア、コーカサスや中央アジアから来た若者たち。英ケンブリッジ大学や伊ボローニャ大学など、名門大学に通う将来有望な学生も多い。41カ国150人の若者の研修で総責任者を務めたのが、小林麻紀だ。
題してMIRAIプログラム。彼らはIT企業やモノづくりの現場を回り、神社仏閣にも触れた。最終日は、日本の軍縮・不拡散をテーマに外務政務官の話を聴いて議論してもらった。
「この訪日ははじめの一歩。既に訪日中から外務省がツイッターなどで発信していますが、これからもネットワークを保ち、日本の情報を提供して関心を維持してもらい、彼らが表舞台に出るときに知日家としてネットワークを生かす。これは種なんです」
京都大学法学部を卒業し、1990年に外務省に入省。東アジア、経済条約、中南米などの関係部署を歴任し、昨年から現職。仕事相手は、5億人の人口を抱えるEUまるごとだ。昨年には岸田文雄外相のアジア欧州会合や、安倍晋三首相のG20会合での日EU首脳会談にも同行した。
自らの仕事は「黒衣」だと話す。国際的な交渉の最終的妥結や地域情勢の議論を首脳や外相級で行うには、材料が要る。それを取りまとめるのが小林の仕事だ。経済、安全保障、開発。EUとの関係はあらゆる方面に及ぶ。省内で次々と上がってくるあらゆる情報や要求を交通整理。議論が深まり、首脳や外相同士の信頼関係、国と国との関係が進展するように準備していく。交渉が終わった時に、双方が良い合意ができたと思えなければ長続きしない合意となってしまう。そのバランスが重要だと言う。
日々新しいことが起きる。資料を読むことは時間との戦いだ。
「眠い目をこすって読むこともあります」
笑顔の裏にある人知れぬ激務が、日本の国益を支えている。
(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2016年2月15日号