
現代アートといえば、村上隆や草間彌生で止まっていませんか。作品が理解できなくて、美術館通いをやめてしまったあなた。正しい「楽しみ方」をお教えします。
蝶やロープが動く機械仕掛けのインスタレーションとスキャナー、そしてモニターに映し出されるのは、そのスキャナーでたった今スキャニングされた偶然の画像。そんな作品が、東京・恵比寿のギャラリー「waitingroom」の小部屋を埋めている。現代アート作家、毛利悠子さんの展覧会だ。
「1秒以上かけてスキャンするスキャナーのブレやズレが価値。どんどん技術が進歩しているので、将来、こんな機械があったのねと、おもしろがって見てもらえるといいなと思います」(毛利さん)
4月のとある週末の夜、そのオープニングレセプションに出かけた。古びたビルの入り口に、やたらと人が出入りしているのは何でだろう。そう不思議に思いながら暗い夜道を進んでいくと、まさにそこが目指すギャラリーだった。
もっと驚いたのは中に入ってから。小さなギャラリーとはいえ、身動きできないほどの人がいる。いかにもアート系の若者もいれば、ジャケット姿の大人も。また観光客らしき外国人もけっこう。作品を囲んで、おしゃべりしたり、笑いあったり。聞けばこの日だけで、200人以上の人が詰めかけたという。
ちょっぴり嫉妬(しっと)した。私ごとだが、美術業界で働いていたのは美術品バブルと言われた1980年代。たいていの展覧会の初日に行われる作品のお披露目パーティーには、高級シャンパンもあれば、ローストビーフだってあった。なのに、こんな熱気あふれる会場は、ついぞ見たことがない。
「音楽ばなれ」「映画ばなれ」「ゲームばなれ」など、時代とともにエンターテインメントの王道だったジャンルが撃沈していくなか、現代アートは逆に愛好家を増やしているとの説がある。
そんな、めくるめく現代アートの世界の楽しみ方をご案内する前に、ここで日本の現代アートの最近の動きをおさらいしておこう。