四年制大学社会学部卒業後、人材派遣会社へ正社員として就職した。

「まずは派遣さんの気持ちを理解しなくてはならない」

 人事部に言われるまま、携帯電話キャリアショップへ出向した。そして派遣会社正社員の経験は一度もないまま、ショップ店員としての日々が2年目に突入している。

「1年間の研修という約束でした。それ以降は本社勤務になると聞いていたのに、なしのつぶてです」(高橋さん)

 友人には「気楽だから派遣でいい」「アルバイトでも十分に生活費は稼げる。プライベートな時間もあっていい」と、最初から就職活動に熱心でない人もいた。「希望通りの仕事ではないから」「上司が横暴だから」という理由で、入社早々、辞めた友人もいる。

 しかし高橋さんとしては、せっかく人材派遣会社の「派遣側」に正社員で入ったのだから、会社を辞めるような冒険はしたくない。文句を言って人間関係が悪化し、いづらくなるのも面倒だ。一方で、望んでいない仕事が続くことに、そろそろ心が折れそう。限界かな、とも感じている。(ライター・羽根田真智)

AERA  2016年3月21日号より抜粋

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