グローバル化の波が「正社員」の足元にも幾度となく押し寄せる。定着するかに見えた「ハイブリッド型」も陳腐化していくのか。
正社員として会社に入れば、定年まで身分は安泰。その代わり、異動も転勤も会社の思うまま──。戦後の長い間、そんな日本人サラリーマンの働き方を支えてきた人事制度が、バブル崩壊後の四半世紀にわたり、何度も見直しを迫られてきた。
戦後の人事制度の根底にあったのは「終身雇用」と「年功賃金」という二つの思想だ。それらを体現してきたのが、「職能資格」という等級制度と、それに対応した「職能給」という賃金体系だった。
職能資格制度とは、社員の能力に応じて等級を決め、賃金などの基準とする考え方。「部下に的確な指示ができる」など、等級ごとに求められる能力が定義されている。多くの企業が、この等級をもとに賃金を決める「職能給」を採用してきた。日本企業の賃金は、「仕事」や「成果」より「人」に支払われる側面が強いといわれるゆえんだ。
職能資格制度は「能力は経験とともに上がる」のが大前提。社員の年齢とともに賃金は上がるが、社員が高齢化すれば企業の人件費も膨らむ。1990年代初めのバブル崩壊で、成り立たなくなった。
「人」に賃金を払う日本型から、「仕事」や「成果」を評価する欧米型へ。その波は次々とやってきた。
まずは第1の波。90年代前半から、各社が“マイナーチェンジ”を試み、「目標管理制度」を導入した。「能力は、あるだけでなく発揮されることが大事」と、掲げた目標の達成度で、人事評価やボーナスの額を決めた。だがベースにある職能給には手をつけなかったため、人件費は上がり続けた。
第2の波は90年代後半。各社はいよいよ“OS”に手をつけはじめる。
管理職には、能力ではなく、企業が求める役割に合わせて応じて賃金を支払う「役割給」の導入が進んだ。能力と違って役割は簡単に増えないため、人件費も抑制できる。若い間は能力で、経験を積んだら役割で評価する。日本の人事制度は、とくに賃金面で、2階建ての「ハイブリッド型」になった。