以前とは別のプラントでは、と思わせるものはそれだけではなかった。正門近くに立つ、立派な2階建ての管理棟。20キロほど離れた「Jヴィレッジ」で作業員の内部被曝のチェックなどをしてきた「入退域管理」を、原発構内でできるようにするため、2013年6月に完成した。

 1200人が利用できる9階建ての大型休憩所も昨年、整備。その中には、作業員用の食堂もつくられた。清潔な室内で、コロッケや魚の煮付けの定食、カレーや麺類など、温かい食品が380円で食べられるようになった。コンビニで買って持ち込んだ弁当やおにぎりを、プレハブ施設の床などに座って食べていた以前とは比べものにならない改善だ。

 放射性物質を吸い込んで内部被曝することを避けるための「全面マスク」を必要としないエリアも、構内の約85%にまで広がっていた。

 津波で押し流されて壊れた車両やタンク、機器……。溶けた核燃料を冷やすのに精いっぱいで、作業上の必要がなければ、片付けずに放置されていたあちこちのがれきも、バスで見て回る範囲ではほとんど目立たなくなっていた。地面をはい回るように置かれていた配管やケーブル類も、束ねられて整理されていた。

「非日常の日常化」

 構内のさまざまな変化を見て回るうち、こんな言葉が自然に浮かんだ。

 日本記者クラブ取材団の会見に応じた福島第一原発の小野明所長は「長期戦に備える必要がある」と表情を引き締めていた。長い闘いには必要なのかもしれないが、私には奇妙な安定感にさえ感じられた。

(朝日新聞編集委員・服部尚)

AERA 2016年2月22日号より抜粋