漢字は普通なのに読みが変わっているのも「キラキラネーム」。取材した人事担当者の中には、「遠回しに家庭環境を聞いてしまう」という人もいた(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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漢字は普通なのに読みが変わっているのも「キラキラネーム」。取材した人事担当者の中には、「遠回しに家庭環境を聞いてしまう」という人もいた(撮影/写真部・堀内慶太郎)
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 新生児に多い名前のトップ10に、颯や悠翔、花音や心結が入る時代。日本人の名前は世代交代が進んでいる。だが、ひっかかる人も……。

 ユニークすぎたり当て字だったり難読だったりする「キラキラネーム」が話題になって久しい。明治安田生命が2015年の新生児の名前を調べ、多い順にランキングにした「新生児名前ランキング」によると、男子1位は「大翔」。だがその読み方は「ヒロト」「ヤマト」「ハルト」「オウガ」……とさまざま。当て字とおぼしきものもある。

『幸せの扉をひらく 赤ちゃんの名前事典』(朝日新聞出版)を出版した命名研究家・牧野恭仁雄(くにお)さんによると、平成生まれ前後からキラキラネームが増え始め、最近は、命名相談に来るカップルの約3分の1が、「奇抜」とも思える名前を候補に挙げるという。

 キラキラネームは就活では、不利になるのだろうか。採用コンサルタントの谷出正直さんは言う。

「大手は学歴フィルターを設けていて、名前まで見るところは少ない。採用人数が少ない中小企業のほうが、キラキラネームを気にする傾向にあります」

 実際、都内のある中小IT企業の人事担当者は、新卒採用の当落線上にいわゆるキラキラネームの女性が残ったとき、悩んだ末に不採用にした経験がある。能力で他の候補者に劣っていたわけではない。どんな親がどんな理由で名付けたのかが気になった。しかし、その質問は「アウト」。だとすると、リスクを取りたくなかった。

 だが、前出の牧野さんは、近年、社会的地位の高い親のほうがキラキラネームを好む傾向にあるのではないか、とも言う。

「名付けは親のコンプレックスが表れる場面。受験勉強、大学入学、就活と似たような人生を歩んできた日本のエリートたちは、個性を求めてキラキラネームを付けるのかもしれません」

 悪いことばかりではない。

 ベンチャー企業に勤める社会人1年目の男性(25)の名前はかなりユニークだが、自分自身、とても気に入っている。

「誰にでも覚えてもらえるので、就活では得することばかりでした。名刺を出して反応されないと、逆にがっかりします」

 一橋大学の西山昭彦特任教授(経営学)はこう話す。

「社会に出てからは、人に覚えてもらったほうが仕事がうまくいく。武器になる可能性も大きいですよ」

AERA 2016年2月15日号より抜粋