仕事を持つ妻が、子どもの出産を機に主婦になる。かつてはそれが一般的だったが、最近は逆に夫が「専業主夫」になる例が出てきた。その数、推定11万人。漫画家・桜沢エリカさんの夫・青木武紀さんもその一人だ。
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エリカの妊娠がわかったのは1999年の夏。その時、彼女から「主夫になって」と言われ、数分考えて「いいよ」って答えました。その頃、僕はクラブのDJ兼店長をしていましたが、子どもがほしかったのは僕のほうだったし、家事もまったく苦ではない。しかも、エリカは当時すでに売れっ子の漫画家でしたので、収入は雲泥の差。僕が専業主夫になるのは自然の成り行きでしたね。
2000年に長男が生まれ、02年には長女が誕生します。いまも朝5時半に起きて、朝食と息子の弁当づくりから一日がスタートします。掃除、洗濯を終えると、昼食をつくり、夕方4時ごろから夕食の賄い。エリカは自宅で仕事をしますから、夕食はアシスタントさんの分も含め多いときで10人分つくります。そして片づけをして、洗濯物を畳んだり、細々したことをしたりしながら、風呂に入って寝るのが深夜0時ごろ。さすがに最近は、昼寝を30分しないと倒れそうになります(笑)。
専業主夫になって15年。あっという間でした。子育てのストレスはあったと思うのですが、楽しいことしか思い浮かびません。いまも子どもたちとはすごく仲がいいですよ。
僕にも男としてのプライドはあります。男なら時計やネックレスなど、好きな人が「ほしい」というものを買ってあげたいじゃないですか。でも、仮に買ってあげても、それは結局エリカのお金。そんな僕をエリカはすごく立ててくれます。
外食の後、支払いを済ませて店を出ると、必ず「ごちそうさま、タケちゃん」って言ってくれるんです。言わなくていいよって返すんですけど、彼女なりのルールだと思います。だから、子どもが手を離れたら、何か仕事を始めて、少しでもエリカに楽をさせてやりたいですね。
※AERA 2015年10月19日号より抜粋