深見浩一(ふかみ・こういち)公認会計士・税理士。大手都市銀行、大手国内監査法人、外資系コンサルティング会社を経て、2001年に独立(撮影/ライター・越膳綾子)
深見浩一(ふかみ・こういち)
公認会計士・税理士。大手都市銀行、大手国内監査法人、外資系コンサルティング会社を経て、2001年に独立(撮影/ライター・越膳綾子)

 負担増を嫌って、日本の富裕層も海外に逃げ始めた。多国籍企業は、より巧みな手法で租税回避を繰り広げている。『<税金逃れ>の衝撃』の著者でもある、公認会計士の深見浩一郎に、その傾向を聞いた。

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 庶民や中小企業が税負担の増加に苦しむ一方で、富裕層や多国籍企業は法律の網をかいくぐり、巧みに税金から逃れています。イギリスの民間団体「タックス・ジャスティス・ネットワーク」の推計では、1999~2007年に日本が徴税漏れによって得られなかった税収は約17兆円。正しく徴税できれば消費増税など不要なほどの巨額の税金が、支払われずにいるのです。

 富裕層の租税回避としてよく知られるのは外国への移住です。日本でも、例えばシンガポール、ニュージーランドなどに大手企業の創業者やその一族が移住しました。これらの国々には相続税や贈与税がなく、莫大な財産を子孫に残せるからです。

 それ以外にも、富裕層は国内の優遇税制を最大限に利用し、課税される財産を圧縮しています。

「タックスシェルター」と呼ばれる富裕層向けの投資商品を使う人もいます。例えば、ヘリコプターや飛行機などに共同出資をして、課税を先送りするのです。スイスの金融機関などが設けるオフショア市場での資産運用も、タックスシェルターの一種です。オフショア市場は非居住者向けの国際金融市場で、日本の税制上の制約を受けず、課税をすり抜けることができます。

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