「機動戦士ガンダム」が教えてくれた新世代リーダーシップAmazonで購入する
「機動戦士ガンダム」が教えてくれた新世代リーダーシップ
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 多くのファンを持つアニメ「機動戦士ガンダム」。社会・組織の在り方、リーダーシップ…その物語からは多くの事を学ぶことができる。

 書店のガンダムコーナーに、ビジネス書、啓発書の類いが増えてきた。「ガンダムに学ぶ~」「シャアに学ぶ~」「一年戦争に学ぶ~」……。ガンダム世代も出世したからか、組織運営や人心掌握術を説いた内容が多い。

 試しに開いてみる。松山淳著『「機動戦士ガンダム」が教えてくれた新世代リーダーシップ』。ランバ・ラル、ブライト・ノア、ドズル・ザビなどの言動を通し、リーダーに求められる資質や役割などを解説している。例えばランバ・ラルの項。彼が人望を集めるのは、豪胆さだけでなく、誠実さや繊細さを併せ持つからだ、と筆者は主張する。砂漠の町ソドンにて、見張りの部下や食堂の主人にまで気遣いを見せるランバ・ラルの姿が、引き合いに出される。

 中国の歴史物で、文官が主君をいさめるときによく「斉の桓公が……」「晋の文公が……」などと偉人の逸話を挙げるが、彼らにとっての教養が四書五経や史記であるならば、ガンダム世代にとってのそれはファーストやZ(ゼータ)なのである。

 常見陽平著『僕たちはガンダムのジムである』は、ガンダムの世界を企業社会の縮図と捉え、ガンダムになれない人々(=ジム)がどう生きるべきかを問うたキャリア論だ。

 ジムと聞けば、ガンダム世代はおよそ同種の単語を連想する。量産型、使い捨て、やられ役、その他大勢……。地球連邦という巨大組織の盾にされ、最前線で犠牲となっていく弱者。ジムのイメージから、企業戦士たちの姿を思い浮かべることはたやすい。ガンダムに例えれば、細かな説明がなくとも、ニュアンスが伝わる。ガンダム世代にとって、ガンダム作品はまさに共通言語なのである。

 いったいなぜ、あまたある作品の中で、ガンダムは教養となり共通言語となれるのか。

「アムロたちと年齢の離れたキャラクターにも、感情移入できる世界観がきちんとつくられているからです」と話すのは、『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』の著者である鈴木貴博さん(52)。ガンダムは「組織の在り方や構成員たちの生き様が極めてリアルに描かれているため、年齢を重ねてから見直しても、アムロ以外のキャラクターに自然と感情移入できる」のだという。

AERA 2015年7月27日号より抜粋