「翁長さん、飲みに来るたび、おれは知事には絶対ならない、市長のまま政治家を終えるんだって熱く語っていたわよ」
そんな翁長氏を、容認から反対へ、市長から知事へと本気で向かわせたのは、一昨年11月、沖縄県選出の自民党国会議員5人全員が、党中央から辺野古反対を捨てるよう説得され、うなだれながら当時の石破茂幹事長と一緒に会見に臨んだ姿だったといわれている。
「あれは現代の琉球処分ですよ。力で抑えつける東京の姿勢が分かって、沖縄全体に火がついたのです」(前出の平良さん)
琉球処分とは、明治政府が武力を背景に琉球国王を廃し、強制的に日本国に統合して沖縄県を誕生させたことを指す。
翁長氏を見ていると、1995年の米兵による少女暴行事件で、日米両政府を相手に立ち回った革新県政の大田昌秀元知事と、どうしてもダブってしまう。しかし、県民大会に大田氏の姿はなかった。
大田氏に会うと、意外にも翁長評は辛口ばかりだった。
「オール沖縄と言うが、容認の市町村長がいます。まだまだオール沖縄ではありません」
翁長氏の父親は、大田氏の政敵だとされる。大田県政時代に県議だった翁長氏は、議会質問でさんざん大田氏を苦しめた「過去」もあるらしく、2人は共闘関係にはならないようだ。ただ、大田氏も、辺野古反対の方向性は支持している。
●全国の世論も移設反対が多数
県民大会の成功により、沖縄は「辺野古阻止」で固くまとまった。次は、どんな戦略で日本政府に立ち向かうのか。
沖縄を前回訪れたときは、いささか暗いムードが漂っているように感じた。県による埋め立て中止指示が国の「指示効力停止」の決定によって阻止され、むなしく空振りに終わったからだ。ところが、今回はムードが一転して明るくなっている。
いま翁長氏を喜ばせているのは、大手メディアの最新の世論調査結果だ。朝日、毎日、日経などの各紙で、辺野古移設反対への支持が、不支持を軒並み上回った。翁長氏サイドは「平均10%、沖縄支持が上がった」と分析している。翁長氏は、安倍首相、菅義偉官房長官、中谷元・防衛相との会談で、「銃剣とブルドーザー」「菅氏とキャラウェイ米高等弁務官の姿が重なる」など、メッセージ性の強い発言を繰り返した。翁長氏サイドは、そのことが世論を喚起させたとみている。