最初は4月に始めた「辺野古基金」の募金が2億円を突破したと報告されたとき。目標は3億5千万円。「7割が本土からの資金です」とのアナウンスに、会場はさらに沸いた。映画監督の宮崎駿さんらと共に基金の共同代表を務めるジャーナリストの鳥越俊太郎さんは壇上で「100億にしよう」と力を込めた。

 トリを務めた翁長氏は、いきなり「島言葉(しまくとぅば)」と呼ばれる琉球語で語り出した。最近、沖縄県の集会では、琉球語が使われる頻度が目に見えて増している。

 世界の民族分離・独立運動で、ある集団が従来の母集団との「違い」をアピールする際に用いられるのは、「言語と歴史」の独自性である。そんなことが、冒頭の肖像画と琉球語のあいさつから、頭に浮かんだ。

 翁長氏は最後に安倍晋三首相を名指ししながら、再び琉球語で声を張り上げた。

「ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー(沖縄の人をないがしろにしてはいけません)」

 スタンドの人々の目がパッと見開かれ、さざ波が広がるように全員が立ち上がり、指笛と拍手が1分ほど鳴り響いた。

 いささか大げさとのそしりを覚悟して言えば、「新しい琉球の王が誕生した瞬間ではないか」と感じられた。

 リゾートやホテルを経営する「かりゆしグループ」のオーナーで、翁長氏を最側近として熱心に支援する平良朝敬(たいらちょうけい)氏は言う。

「あの一言を聞いた瞬間、『そうだー』と心に響きました。私が事前に見た原稿にはなかった言葉です。知事の心の中から、自然にあふれ出たのでしょう。安倍首相が米議会でカンペを読んだのとは違います。『粛々と進める』とか、『抑止力の維持』『普天間の危険性除去』とか、東京が語る冷たい言葉に対して、『バカにするな』という沖縄の気持ちを代弁してくれた」

●うなだれる議員 現代の琉球処分

 翁長氏を知事就任からわずか半年でカリスマに仕立てたのは、逆説的に言えば日本政府であり、安倍・自民党政権であることは、疑いようのない事実だ。

 翁長氏はもともと、自民党の典型的な保守政治家で、那覇市長を4期務めた。那覇の繁華街・松山のバーのママは笑う。

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