当面の戦略は「情報戦」を仕掛け、沖縄に対する、さらなる世論の共感を勝ち取ることだ。翁長氏は5月20日、東京都内の日本記者クラブと日本外国特派員協会で相次ぎ会見。日本メディアからの単独取材は断っているが、ニューヨーク・タイムズなどの国際メディアの個別取材では、「辺野古の新基地は絶対につくらせない」と発信した。

 それにしても、政府と沖縄との間で一切、建設的な対話が行われる兆しが見えない。

 沖縄の誰もが口にするのは、「昔の自民党は違った」。実際、いまの自民党中央は、現在の翁長体制にほとんどパイプを持っていない。1990年代までは、橋本龍太郎、小渕恵三、野中広務、梶山静六、鈴木宗男などの「沖縄族」たちが、良くも悪くも県政界と深く付き合っていた。こうした顔ぶれは、いずれも派閥でいえば「経世会」に所属していた政治家。いま絶頂にある安倍首相らの「清和会」は、沖縄との縁が深くはない。

 前出の大田氏は振り返る。

「昔、官房長官だった梶山さんと一緒に、沖縄のホテルの地下のバーで、いろいろ沖縄の振興策を話し合ったものです。橋本さんともさんざんやり合ったが、ホットラインでいつでも話し合えた。彼らは安倍首相のように押し付けがましいことは、一つも言わなかった」

 安倍政権が「切り札」と考えている沖縄懐柔策の一つに、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の誘致や、カジノ建設があるとささやかれている。だが、そうした“アメ”が、どこまで通用するのだろうか。

 革新勢力を翁長支持に集結させた立役者の一人で、辺野古のある名護市選出の県議、玉城(たまき)義和さんは、こう話す。

「沖縄の本気度を、安倍さん、菅さんは見誤っています。過去の沖縄は保守が安保賛成、革新が基地反対で割れていましたが、『基地の整理縮小』の一点で保革が折り合いをつけた。これは崩せません。沖縄の状況は、復帰後最大の住民運動の高揚期に入っています。東京は事態の深刻さを認識できていない」

●厳しい対米交渉 駐日大使もダメ

 沖縄は、米国とも向き合わなくてはならない。翁長氏は27日から20人以上を引き連れて訪米し、沖縄の民意を説明する方針だ。しかし、日程が近づくにつれて、悲観的な見方が強まっている。先の日米首脳会談では、安倍首相とオバマ大統領が「辺野古移設が唯一の解決策」と確認したばかり。翁長氏が米国で冷淡に扱われる可能性は高い。

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