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 日本銀行の異次元緩和など、「アベノミクス効果」で株高・円安の様相を見せる日本経済。だが円安によるかさ上げによってかすみがちとはいえ、「試練の時代」に下した経営判断の善しあしは業績格差を生み、それが表面化するケースも出てきた。

 電機業界が好例だ。不振だったプラズマテレビから撤退し、自動車や住宅関連の事業を強化したパナソニック、同じように大なたを振るった日立製作所や東芝の好業績の背景には、地道な体質改善の跡も見える。

 一方、シャープは今年度の業績予想を引き下げ、純損益は300億円の赤字に。亀山工場といった大規模生産拠点を抱える主力の液晶部門で、スマホ向けの価格競争が激しくなり、円安にもかかわらず採算が悪化したという。市場動向を見誤ったのだ。

 自動車業界でも、製造ラインの見直しといったコスト削減を徹底したトヨタ自動車は過去最高となる2兆1300億円の純利益を見込む。一方、小型車「フィット」のリコールが相次いで品質問題が浮上したホンダは、減益となる見通しだ。

 この先、円安がどこまでも進み続けることはあり得ない。SMBC日興証券の伊藤さんの見方はこうだ。

「『これだけ追い風が吹いているのになぜ赤字なのか?』という企業もあります。円安効果だけで業績が良くなっている企業にとっても、まさにこれからが正念場です。好業績の時に痛みを伴う事業構造の改革に取り組むのは難しい面もありますが、必要な資金が豊富にあるという意味では好機でもあるのです」

AERA 2015年3月9日号より抜粋

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