職場に近い場所に住居を置く、「職住近接」の動きが東京都心で目立っている。中には、それを勧める会社もあるようだ。
渋谷に本社を置くサイバーエージェント(CA)が始めた「2駅ルール」は、会社から2駅以内のところに住む社員に住宅補助を出すという制度である。社員の通勤ストレスを減らすための取り組みだが、多くのIT企業が賛意を示し、3駅などに改変しながら導入している。
「『恵比寿会』や『三茶会』といった、社内グループが生まれています。近所に住む同士で仕事終わりに飲みに行くんです」と話すのは、CA広報の真下紗枝さん。これは家が近いから生まれている現象で、1時間かけてベッドタウンから通勤していたのでは難しい。そしてその成果は、単に「社員同士の交流が深まった」ことにとどまらない、と真下さんは指摘する。
「スマホなどのエンタメ系サービスの企画って、友人とご飯を食べているときの会話の中から出てきたり、仕事外から生まれてくることが多いんです」
CAがターゲットとするユーザーは若者。オフィスを渋谷に置いたのも、その世代のニーズをいち早く知るためだ。スピードが命のこの業界では、新しいサービスを生むためのアイデアの芽を見つけ、他社より早く商品化することが必須。遊びの現場=開発の現場なのだ。「職住近接」は、オンとオフの切り替えがない現代のサービスであるエンターテインメントという業種、つまり、都市の主要産業特有のライフスタイルと言える。
※AERA 2015年2月23日号より抜粋