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「イスラム国」人質事件を機に戦場取材の是非が問われている。戦争は誰が伝えるのか。ジャーナリズムに厳しい選択を突きつける。

 2月8日放送のフジテレビ「Mr.サンデー」。シリア渡航計画を理由に、新潟市のフリーカメラマン、杉本祐一さんが外務省に旅券を返納させられた問題で、コメンテーターの木村太郎氏の口から言葉があふれた。

「外務省は『(シリア取材など)そんなことより人の命が』って言うが、(表現の自由を保障する)憲法の権利を『そんなこと』って言うなんて」「危険なところはニュースがあるところ。行かなきゃ伝えられない。それが人の知る権利に応えることなんです」

 あまりの痛烈さに、隣にいた宮根誠司キャスターが「外務省も揺れたのでは」と取りなすが、「たかが外務省がこれを止めるなんて基本的に間違い」。

 欧米メディアで働いた経験が豊富な蟹瀬さんは「政府や国民に迷惑をかけるという発想が出るのは非常に特殊」と指摘する。

「リスクがあってもいけると判断すれば行くのが記者。人質にされて迷惑だという言葉は、私の知る限り、欧米では出ない。リスクを伴う使命を持つ仕事だと理解されているからです」

 確かに、オバマ大統領は後藤さんの勇気をたたえたが、安倍首相は「痛恨の極み」「償わせる」とだけ語り、称賛はしなかった。

 興味深かったのが隣国・中国の世論の反応だった。中国は基本的に戦場に記者を出さないこともあり、後藤さんの行動は英雄視され、ネットで一気に有名人になった。それだけに日本の「自己責任論」や「蛮勇」批判には、中国版ツイッターの微博などで「日本もだんだん中国に似てきたな」「日本も我が国の言論統制を批判できないね」と皮肉る声で沸いた。

AERA 2015年3月2日号より抜粋