長く「下請け」扱いが続いたエンジニアが職場の主役になりつつある。そのニーズの高まりは採用方法にも影響を与えている。

「エンジニアの時代」は採用方法を一変させた。優秀なエンジニアほど、年収より「経験」を大切にするから、入社前に、職場や同僚の顔ぶれを具体的に確認する人も多い。主にIT関連人材を企業とつなぐ「ウォンテッドリー」の仲暁子代表取締役CEOは言う。

「人事を介した“お見合い型”の採用プロセスは機能しづらい。職場や同僚などに魅力を感じてもらう、“恋愛型”の就活に移行しつつあります」

 エンジニア一人の採用が、会社の危機を救うこともある。会員制転職サイトを運営するビズリーチは、現在CTOを務めるエンジニア・竹内真さん(36)の採用で危機を免れた。

 5年前、竹内さんは社長の南壮一郎さんに声をかけられた。起業したものの、メインサービスである転職サイトが立ち上がらない。一つのバグを潰すと、二つのバグが見つかる。開発を始めて8カ月が経っていたが、サービスインの見通しは立っていなかった。そのサービスを竹内さんは、ゼロから、あっさり2カ月で作り直した。

 竹内さんは、プログラミングを「法律を作るのに似ている」と言う。法律には抜け穴やグレーゾーンがつきものだが、システムにもバグが出る。問題が生まれたとき、解決策がピンとくるかが重要。優秀な人とそうでない人の違いは、経験に裏打ちされたひらめきにあるのだという。

「夢のなかで解決策が見えたことも」(竹内さん)

 竹内さんの一件以来、同社では「エンジニアは企業成長に必須」という認識が広がった。エンジニアには10万円超で販売されるフカフカの椅子を用意、高価な専門書をシリーズで揃えるなど、働きやすさを心がける。

AERA  2015年2月9日号より抜粋