アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はブリヂストンサイクルの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■ブリヂストンサイクル 技術管理部 デザイン課 課長 中森和崇(44)
値段が高くてもいいから、おしゃれなママチャリがほしい──そんなママたちの願いをかなえたのが、ブリヂストンサイクルが2011年に発売した電動アシスト自転車「HYDEE.B(ハイディビー)」。子育て世代の女性誌「VERY」(光文社)とのコラボでつくった。
「子どもを乗せる自転車は、実用性重視のものばかりでしたが、『子育て、カッコイイ』、そんな流れを自転車でつくれたことに誇りを感じます」
そう話す中森和崇は、自転車のデザイン一筋で生きてきた。千葉大学工学部で工業デザインを学んだ後、自動車業界に進む道もあったが、「もっと身近な乗り物をつくりたい」とブリヂストンサイクルに就職した。自転車のデザインのコンセプトや形、色を決めるのが仕事。ただ、HYDEE.Bの開発では、安全とオシャレのバランスに苦心した。
ブリヂストンサイクルには、すでに人気の3人乗り電動アシスト自転車「アンジェリーノ」があった。「できるだけオシャレに」とつくったが、やはり安全性が最優先。ところが、新開発する自転車は「オシャレありき」。社内の安全基準内に収めつつ、VERYママのオシャレ感覚を満たさないといけない。
驚くこともあった。細いタイヤがカッコイイと思っていたら、マウンテンバイク世代のママたちが求めたのは、ゴツゴツした極太タイヤ。それなら子どもを乗せてもふらつかない。一方、フレームはシンプルな形にこだわった。メーンカラーは「マット(ツヤ消し)ブラック」に。HYDEE.Bは200台の先行予約が、受け付け開始40分で埋まった。
新シリーズ「bikke(ビッケ)」は、極太タイヤはそのままだが、重心を低くして車輪を小さくした。進化を続ける電動アシスト自転車の国内市場は急伸中。欧州の街をさっそうと走れば、オシャレなパリジェンヌも振り向くだろう。世界を席巻する日も、そう遠くない。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2014年9月22日号