スターバックス コーヒー ジャパン「掘り起こす豆の物語」スターバックス コーヒー ジャパン チームマネジャー コーヒースペシャリスト江嵜譲二(44)撮影/写真部・東川哲也
スターバックス コーヒー ジャパン
「掘り起こす豆の物語」

スターバックス コーヒー ジャパン チームマネジャー コーヒースペシャリスト
江嵜譲二(44)
撮影/写真部・東川哲也
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 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はスターバックス コーヒー ジャパンの「ニッポンの課長」を紹介する。

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■スターバックス コーヒー ジャパン チームマネジャー コーヒースペシャリスト 江嵜譲二(44)

 挽いたコーヒー豆をグラスに入れ、熱湯を注ぐと、表面に黒い粉が薄い層をつくる。表面をそっとスプーンで割り、「ズッ」とすする。液体と一緒に空気を吸い込むことで、豆の味や香りがはっきりとわかる。米シアトルから運ばれてくる豆を日々、江嵜譲二はこの「カッピング」と呼ばれる風味テストで評価する。

「豆の味わいや香りを、どんな言葉で表現するべきか。どういった食べ物と相性が良いのか。年に何度も、スタッフを交えて検証するのが、私の仕事です」

 スターバックスの店頭にある豆の説明書きを、ご存知だろう。アフリカのザンビアの農園でとれた期間限定の希少豆ならば、「シトラスの香りに、リンゴやバニラを思わせる風味とココアのような口あたり」。果実の風味がある豆には果物を使ったデザートが合うし、十分に寝かせた豆が持つ独特の風味は、熟成したチーズと相性がいい。ワインにおける「マリアージュ」は、コーヒーの世界にもあるのだ。

「初めは400文字ぐらいのリポート。ただ、店頭のメニューや解説カードには文字数の制限があるから、要所を短文に落とし込む」

 めざすのは、だれが聞いても味わいや香りをイメージできる言葉だ。

 日本大学文理学部を卒業したが就職せずにフリーター生活。1996年にスタバでアルバイトを始め、翌年、正社員になった。東京都内のいくつかの店で店長を務め、豆を売るうち、いつしか社内で「豆の人」と呼ばれるようになり、2004年にはコーヒースペシャリストに任じられた。日本のスタバには3人しかいない名誉ある“称号”だ。

 モノがあふれる現代、売れる商品には物語があると言われる。こげ茶色の豆はどれも同じに見えるが、産地や収穫した年、農園主の思いなどの違いによって、豆はそれぞれ異なる物語を持つ。江嵜の仕事は、その物語を掘り起こし、伝えることにあるのだ。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・岡本俊浩)

AERA 2014年9月8日号