大学入試に新たな試験方法が登場する。答案の修正も評価される、新型AO入試とは。

 2016年度の実施に向けて、ユニークな方法を開発しているのは東京都文京区のお茶の水女子大学。同大の場合は、現行のAO入試が日本語と英語による講義の受講とレポート作成など、「お茶大の入試で最も難関」とされ、志願者も減少傾向にあった。

 改革するにあたり、自ら問題を発見する能力を持った主体性のある学生、応用力や伸びしろのある学生を選抜することを目的に定めた。予定している選考の流れは、プレゼミナールを伴い、それが受験生以外にも開放されていること、図書館と実験室を舞台に長時間をかけた論文作成や実験が課されることが特徴だ。

 この新型AO入試は、別名新フンボルト入試という。世界最初の近代大学であるベルリン大学の基本構想を作ったヴィルヘルム・フォン・フンボルトにあやかった。研究中心主義のドイツ近代大学では、文系は図書館、理系は実験室でゼミナールをすることが重視された。大学は知識を吸収する場ではなく知識を生産する場というのが理念だ。入試の設計に関わっている耳塚寛明副学長が説明する。

「フンボルトの思想を、そのまま入試のプロセスに反映しました。これは実社会でも求められる能力。仕事では、辞書の使用に制限はないし、どこから情報をとってもいい。知識を使っていかに自分なりの解答を生み出せるのかが、問われるのです」

 例えば文系は、「貧富の差をなくすことは可能か?」といったテーマが与えられ、自分なりに問題を解釈し、論を組み立てていく。思想に関心のある学生もいれば、実証的なデータに基づいて議論する学生もいる。途中、試験官の講評をはさみ、そこからさらに調べてまとめ直させることで、他者の意見を聞いて修正する柔軟性なども見る。入試推進室長の安成英樹教授も言う。

「単に合格を目指すだけでなく、大学ではこのように研究するのだという場面をかいま見る機会になればいい。たとえ不合格だったとしても、その後の勉学に生かしてもらえる入試にしたい」

AERA 2014年11月3日号より抜粋

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