スマートフォン市場を作ったアップルが次を狙っている。株価を下げるほど「想定内」だったアップルウオッチだが、狙いは別にあった。
9月9日(日本時間10日)、「Apple Watch(アップルウォッチ)」は発表された。確かにIT系のガジェットとしては洒脱であり、上質な印象を受けた。デザインやバンドのバリエーションを含めれば34モデルもあり、従来のスマホとも、他社のスマートウオッチとも展開が異なる。
だが、用途の提案という意味で、新奇性は薄かった。メールやSNSの通知表示にフィットネス、といった使い方は他社も志向しているところだし、単独では利用できない「iPhoneの周辺機器」というところも同じだ。宝飾品も含めた「すべての時計を過去に追いやるような存在」でもなく、そこに落胆した人々も多かったようだ。
実際、9日の米市場でアップルの株価は、アップルウオッチ発表後に急落。しかし、「肝」は別のところにある。
「マックもiPodもiPhoneも、アップルの製品は、ユーザーインターフェースの革新とともにあった。iPhoneの操作を小さく模しても、時計には有効ではない」
アップルのティム・クックCEOは、発表会でこう説明した。
アップルウオッチには、竜頭(側面のつまみ)を回して画面を上下に動かしたり拡大したりする「マジッククラウン」という操作方法が採用された。スマホのようにタッチで操作するには小さすぎるからだ。音と振動でコミュニケーションする機能もある。心拍センサーで取得した自分の脈動を再現して画面上で確認したり、脈動をメッセージとして他人に伝えたりもできる。
タッチパネルを指でトンと叩く「タップ」や指を滑らせる「スワイプ」、タップと同時に指をずらす「フリック」など、iPhoneで採用された操作性はハードやソフトの開発者を刺激し、その可能性を広げた。アップルウオッチの米国での発売は来年初め。「マジッククラウン」でもこれを再現できるだろうか。
※AERA 2014年9月22日号より抜粋