ジェンダーフリーを毛嫌いし、女性の社会進出を促す数値目標の設定にも慎重――そんな女性たちを入閣させた安倍改造内閣で、本当に女性活用は進むのか。
女性を過去最多タイの5人も入閣させた安倍晋三首相は3日夕の記者会見で、「いずれも十分能力のあるメンバーであると確信している。女性ならではの目線で新風を巻き起こしてもらいたい」と胸を張った。その言葉を信じていいのだろうか。コラムニストの北原みのりさんは、疑っている。
「安倍政権からは『もっと産め、もっと働け』というメッセージしか聞こえてこない。今回の人事を見ても、安倍さんは自分に考えが近い人や、わがままを言わない頑張り屋さんが好きなのね、と。はっきり物を言う野田聖子さんを外したことでも、それが分かる」
確かに、今回入閣した女性の中で安倍首相に近い3人、いわば「安倍ガールズ」の面々の過去の発言をたどると、安倍氏が本気で女性の社会進出を望んでいるのか、疑いたくなる。
安倍ガールズの筆頭は、なんといっても高市早苗氏だろう。森内閣で官房副長官だった安倍氏を支援する「勝手補佐官の会」を発足させた側近だ。内閣改造前は自民党の政務調査会長の要職を任され、改造では総務相に抜擢された。女性の社会進出を引っ張ってもいい立場だが、女性の社会進出を促すために数値目標を設ける「クオータ制」については慎重な立場だ。
欧州などでは、国会議員の一定割合を女性に割り当てるクオータ制をテコに、女性議員を増やしてきた国も多いのだが、高市氏は過去、「逆差別にあたるとの議論もある」と発言。「強制的に枠を設けないといつまでも活躍の場が生まれない」と導入論を唱える前総務会長の野田聖子氏と対立した。
一方、経済産業相に就いた小渕優子氏と、法務相の松島みどり氏は、ガールズほど安倍氏との距離は近くない。
小渕氏は2012年、第2次安倍内閣への入閣を求められたが固辞している。それでも安倍氏が起用にこだわった理由の一つは、原発再稼働だ。批判の矢面に立たされかねない経産相には、「コワモテの男性より、幼い子どもを持つ女性がベスト」(経産省幹部)というわけだ。
40歳という若さも魅力で、政治評論家の有馬晴海氏は、「小池百合子氏や野田聖子氏は世間的にはあきられつつある。今や『永田町のマドンナ』となった小渕氏を、安倍氏はどうしても政権の顔に使いたかった」
※AERA 2014年9月15日号より抜粋