「働きがいのある会社」や「自己実現できる会社」を求める就活生は多いが、そう簡単に得られるものではないんです(撮影/鶴崎燃)
「働きがいのある会社」や「自己実現できる会社」を求める就活生は多いが、そう簡単に得られるものではないんです(撮影/鶴崎燃)
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 近年、仕事に「働きがい」を求める就活生が増えているという。

 新卒向けの会社説明会で、黒いスーツを着た学生が質問した。

「この仕事に、働きがいはありますか」

 私、聞いていて腹が立ちました。正しくはこう質問すべきでしょう。

「この仕事で働きがいを感じるときは、どんなときですか」

 自己分析や会社研究に熱中し、「自分の夢」や「働きがい」ばかり求める就活生が増えている。冒頭の質問の背景には、入社すれば自動的に働きがいが得られるという幻想がある。

 若手人材の採用・育成に詳しい評論家の常見陽平さんは言う。

「どんな仕事にも必ず『働きがい』はあります。仕事として成立している以上、何らかの価値を社会に生み出し、対価が支払われるからです。ただ、『働きがい』を見つけられるかどうかはその人次第。会社は与えてくれません」

 なぜこんなにも「働きがい」至上主義の学生たちが増えたのか。常見さんは時代を代表するアニメ、漫画を例にこう分析する。

「1980年代に流行した『機動戦士ガンダム』は、大企業の新卒一括採用物語です。普通の少年たちが戦争に巻き込まれ、戸惑い、叱られる中で、だんだんと当事者意識が芽生えていく。その様子は、戸惑いながら仕事に慣れ、成長していく新入社員の姿と重なる」

 では、今の学生は?

「夢を信じて仲間たちと自己実現を目指す『ONE PIECE(ワンピース)』を読んで育った世代です。現実世界にも、大きな理想や働きがいを声高に語り、互いがリスペクトし合う組織があると信じている。でも、実際は対立や摩擦など不愉快なことも少なくない。そこにミスマッチが生まれる」

AERA  2014年7月7日号より抜粋