大気汚染に関しての意外な調査発表が、今年1月、インドのメディアを騒がせた。これまで空気の悪さでは世界一と悪名の高かった中国・北京よりも、インドの首都ニューデリーの空気のほうが人体に有害であることが報告されたのだ。
筆者も昨年末に港町のムンバイからニューデリーに引っ越してきたが、空気の違いは歴然だ。大げさではなく、1時間も外に出ていると喉がいがらっぽくなる。
PM2.5を吸引すれば肺の奥深くまでとりこまれ、血液中にも侵入して人体に影響を与える可能性がある。今回の調査では、ニューデリーの大気中に含まれるこのPM2.5の濃度が、北京の2倍以上記録された。世界保健機関(WHO)で定めるPM2.5の環境基準値は1メートル四方に25マイクログラム(1日平均)。ところが、ニューデリーでは最悪の日では、WHOの基準値の25倍にもなる。
この発表に対して、他の調査ではそんなに高い数値は記録されていないと、愛国心の強いインドの学者らは反論しているが、いずれにしてもニューデリーの空気が基準値の10倍以上汚染されていることは動かぬ事実である。こんな環境だから、肺疾患を患う患者数やぜんそくによる死者数はインドが世界一。さらに、肺病にとどまらず、PM2.5のように血液中に侵入する超微粒子は、心臓病なども引き起こすといわれている。
※AERA 2014年5月19日号より抜粋