原発事故から2年8カ月がたつのに進まない除染作業。福島の人々は憤りを感じている。

 JR福島駅から車を20分ほど東へ走らせると、赤や黄に色づく阿武隈山系の山あいに巨大な「プール」が現れた。3700平方メートルの敷地に4メートルの穴が掘られ、数百の黒い土嚢(どのう)が並ぶ。穴の底に下り、土嚢に近づくと線量計のアラームが鳴り始めた。値を見てみると、毎時8.16マイクロシーベルトだった。

 このプールは、東京電力福島第一原発事故の除染作業で出た汚染土を保管する仮置き場だ。福島市内にある常円寺の住職、阿部光裕さん(49)が原発事故の直後、寺の裏山に造った。

「こんな土が今も市内の通学路にあるんです」

 阿部さんは腹立たしそうに言う。土は道路や側溝からかき集めたものだ。

 ここは現在、市が管理しているため、市の除染作業で集められた土も持ち込まれる。

 「こっちが市の除染で出た土ですよ」

 阿部さんの指す土嚢に線量計を近づけると、毎時0.23マイクロシーベルト。これは環境省の設定した除染基準で、基準ぎりぎりの汚染土を集める市の除染作業に、阿部さんは怒りを隠さない。

「低線量の土を集めても意味はない。役所はむしろ邪魔です」

AERA  2013年12月9日号より抜粋