国際舞台で活躍する人材を育てるべく、文部科学省は昨年から「グローバル人材育成推進事業」を始め、大学を支援している。公募制で採択校には年間1億2千万~2億6千万円が配分されるというものだ。採択校のひとつを取材した。
愛知大学(名古屋市)の現代中国学部では中国に関わる人材を育てている。在学中は全員必修の留学のほか、北京のイトーヨーカ堂で接客業務、JTB上海で旅行企画などの研修を行うインターンシップ、現地調査が授業に組み込まれている。調査は、毎年都市を変え、最近では青島(チンタオ)、寧波(ニンポー)などで、都市の家庭、農村、企業を訪問してライフスタイルを尋ねた。
同学部の歩みは、日中関係に翻弄されてきた。志願者数は北京オリンピックで増え、靖国神社参拝問題で減った。さらに尖閣諸島問題で、今年の現地調査先は中国から台湾に変えざるを得なかった。
10月末に天安門広場前で自動車突入・炎上事件が起こったとき、「日中関係論」などを担当する砂山幸雄副学長はゼミ合宿を行っていた。事件を受け、中国人留学生を交えて、「あれはテロなのか」「いや違うのでは」と白熱した議論がなされた。
砂山さんは、「日中関係が厳しい今こそ、中国を理解し、同時に中国に日本について説明できる人材を育てたい。外交官や外資系企業のエリート層だけではなく、地元の中小企業にも目を向けています。日本全体のグローバル化が進んでいる現在、それに対応できる人材こそグローバル人材でしょう」と話す。
※AERA 2013年12月2日号より抜粋