謝罪会見するみずほ銀行の佐藤頭取。彼を傷つけないよう、虚構が生まれたのだろうか。その結果、「ウソつく銀行」の汚名を着せられた (c)朝日新聞社 @@写禁
謝罪会見するみずほ銀行の佐藤頭取。彼を傷つけないよう、虚構が生まれたのだろうか。その結果、「ウソつく銀行」の汚名を着せられた (c)朝日新聞社 @@写禁

 みずほ銀行が、反社会勢力との取引を理由に行政処分を受けた。しかし事件の焦点は、今ではみずほがとった金融庁への対応へと移っている。金融庁の検査に対し、「取引の情報は担当役員度止まりだった」と嘘をついていたことが発覚。みずほはどんなシナリオを描いて虚偽の報告をしたのか。

 取引の事態が表沙汰になると、みずほ銀行の経営陣は逃げ回り、広報担当者は「情報は常務止まり。トップには上がらなかった」と説明した。そんな時、筆者にある筋から情報が入った。

「担当常務だった倉中伸さんは人事畑の手堅い人物。不正を抱え込むような愚かなことはしない。危ない情報は必ず上にあげているはずだ」

 金融庁などに取材した結果、「情報はトップに上がった」という感触を得た。みずほ銀行には「本当に常務止まりでいいですか。ウソだったらトップの首が飛びますよ」と念を押した。すると回答が来た。

「代表権のある副頭取に情報が上がっていた」

 もはや隠し通せないと観念したのか。虚構の一角が崩れると、ドミノ倒しのように歴代頭取の関与が表面化した。

 当初、流布されていたのは、「オリコは旧第一勧銀系の天下り先。仲間内の不祥事を知られたくないので上へあげずに抱え込んだ。旧興銀出身の佐藤頭取は、全く知らない。責任を問われるのは気の毒」という構図だった。とても分かりやすい筋書きだが、つじつまが合わない。倉中氏は旧興銀出身。オリコの不祥事を抱え込む理由は見当たらない。

 ウソで固めるなら、関係者が口裏を合わせる必要がある。ところが合併行の弱みか、それがないまま「役員止まり」という虚構が先行し、墓穴を掘った。

 金融庁の栗田照久・銀行第1課長は9日夕、記者を集め、みずほ銀行などに追加報告を求めたことを明らかにした。金融庁の内部事情を知る人は言う。

「金融庁の畑中龍太郎長官と佐藤頭取は個人的に親しい。担当役員レベルの不祥事という筋書きで収めようとしたが、難しくなった」

 みずほと金融庁の密約説だ。問題発覚当初、記者会見を開かなかったことは、「『頭取責任なし』で金融庁上層部と話をつけ、逃げ切れると見ていたからではないか」という臆測を呼んだ。金融庁の担当官も「旧第一勧銀の事件ですよ」とほのめかし、大騒ぎしないでと言わんばかりだった。

 空気は一変した。「下手な動きをしたら金融庁も返り血を浴びる」と検査官OBは釘をさす。次の局面のテーマは「虚構のシナリオを描いたのは誰か」。そして頭取の責任が問われる。

AERA 2013年10月21日号