iPhoneを扱うソフトバンクとKDDI(au)に対して、「一人負け」とも言える状況が続いていたドコモ。ついに9月20日からiPhoneの販売を始める。ドコモとアップルが組んだ先に、何が起きるのか。
ドコモがiPhoneを販売するという噂は、これまでもたびたび浮上してきた。今回の決定も、SMBC日興証券の白石幸毅シニアアナリストは「規定の路線」だとする。ただ、アップル側が厳しい販売ノルマを設定していることなどがネックとなって、両社は歩み寄れなかったとされる。なぜこのタイミングで両社は手を結べたのか。
「ここに来て、両社を巡る経営環境が変わってきた。アップルにはかつてほどの勢いがなく、先進国のなかで提携できていない大手キャリアとしてのドコモは、重要な存在になっていた。ドコモも、ソフトバンクとKDDIがiPhoneの販売を始めて以降、ずっと苦戦している。お互いに譲歩しやすい状況が生まれていた」(白石氏)
両社にとっては、ついに結べた最良の提携と言える。だがこの提携は、競合他社にとって「苦難の道」への第一歩となる。
早々に対応を迫られるのが、ソフトバンクとKDDIのキャリア2社だろう。調査会社IDCジャパンの木村融人シニアマーケットアナリストは言う。
「各社とも常識的な料金体系を維持するのなら、ドコモから顧客が流出する流れは止まり、ドコモ『一人負け』状態は確実に終焉に向かうでしょう」
だが、これまでiPhoneを「武器」にドコモから顧客を奪い、収益力を高めてきた2社が、手をこまねいてはいないだろう。同じ商品を他社より多く売ろうとすれば、この先に待っているのは熾烈な価格競争だ。MM総研の横田英明研究部長はこう指摘する。
「ドコモが何かやったときに必ず対応してくるのがソフトバンク。ソフトバンクは今年7月に米スプリント・ネクステルを買収しており、両社あわせてiPhoneを調達することで、1台あたりの購入価格を抑えられる可能性がある。そうなれば価格勝負はしやすい。またKDDIも、家庭用インターネットとのセット割引などを一歩進めるかもしれない。三つ巴でお互い引かない状況になれば、消耗戦に突入する。利益面への悪影響は避けられない」
※AERA 2013年9月23日号